2011年 01月 12日
STERUSS LIVE@HMV映像/BIG UP TEEZEE君
俺たちを見続けてくれているTEEZEE君が
前回のHMVでのライブ映像を上げてくれました。
動画の下には、TEEZEE君が円鋭リリース当時考えてくれた
ライナーノーツを載せました(熱すぎる!!)。
いつも本当にありがとうございます!!






以下TEEZEE君作「円鋭」ライナーノーツになります

現N&Pのメンバーも含む初期から数えると通算4枚目、3人組になってからは2枚目となるステルスの新作『円鋭』がとうとう完成した。まだ記憶に新しい日本語ラップクラシック『白い三日月』からの2年半の間に、crime6/BELAMA2/DJ KAZZ-Kの3人が過ごしてきた時間や経験が余す所無く録音された15曲45分58秒に耳を傾けながら、こんな文章にお付き合い下さい。

思えば前作『白い三日月』というアルバムは、『ホームブリューワーズ2』という"さんピンCAMP"以降の日本語ラップの歴史に一旦リセットをかけたような傑作コンピレーション盤に収録された事で、"横浜にステルスあり"と幅広く全国のヘッズに知られクラシックと化した名曲「イブクロ」(これが6人組ステルス最後の録音となる)からスタートしたアルバムだと思う。それはまるでクライム6・ベラマツ・カズKの3人が新しいグループとして再生していく過程のような激しいライブ/レコーディングの繰り返しの中で進化/深化を重ねた結果作り上げられたものだった。そして出来上がった『白い三日月』にはもう「イブクロ」は収録されていなかった…だって、それを越える数々の新たなクラシックがそこには沢山あったから! さんピン世代の先輩に最大級のリスペクトを贈りつつも、自分達の世代が新たなクラシックを作るんだ!というマニフェストをサイプレス上野と共に刻んだ2005年の日本語ラップアンセム「マイク中毒パート2」、そしてブッダブランドのサンプリングソースとして有名なジャパニーズレアグルーヴ"鈴木勲"本人から直接サンプルクリアランスをとりつけたライブのハイライト曲「真夏のJAM」などなど、自分たちのクルーでありホームイベント「建設的」や「ONE」でも切磋琢磨するZZプロダクションの仲間を要所でFEATURINGしながらも、サウンド面ではDJ KAZZ-Kがサンプリングマジック溢れるトラックで全体を引き締め、耳の越えたさんピン同世代のヘッズからリップ/キック/ケツメイシで日本語ラップに興味を持ったようなティーンリスナーまで多くのファンを惹き付けた素晴らしいアルバムであったことは、皆さんご存知のことでしょう そうして出来た『白い三日月』の曲達はヒップホップオンリーのイベントに限らず、様々な場所でパフォームされることでより姿を変えていった。その中には『円鋭』にも客演として迎えられたTOTOのSUIKAや、未だ現役のリヴィング・レジェンド"鈴木勲OMA SOUND"との生演奏でJAMした「真夏のJAM」もステルスのメンバーには忘れられない体験だったであろう。 そうした時間の中で、少しずつニューアルバムへ向けた制作が動き出す。3人それぞれがウィークディに仕事を持っている事もファンにはよく知られているステルスだけに、全員集まってのミーティング/レコーディングが出来る時間はフルタイムのミュージシャンに比べても限られてしまう。しかも一発録りのファーストテイクOKなんて許さないであろう(結して技術の問題ではなく)こだわりのある3人だけに、1度録音された曲もライブ/レコーディングの繰り返しの中でも何度も作りかえられて、磨きあげられた事は容易に想像できる。しかし、完成した『円鋭』にはそんなストラグルの影も見えないくらい、澄みきったサウンドとリリックにあふれているのだから! たびたびの比較となるが、やはり避けては語れない前作『白い三日月』と今作『円鋭』の変化した点を筆者なりに考えてみたら、以外の様になった

(1)制作機材/環境の変化
(2)"日本語ラップ・スタンダード"的なものとの距離感
(3)客演を最小限に控えたメンバー3人だけの世界感の追及

(1)については『白い三日月』の頃、KAZZ-Kの自宅内のホームスタジオにて全てのトラックが制作され、ボーカルさえも部屋の片隅に作られたボーカルブースで録音されていた(それでいてあのクオリティなのだ!) 『円鋭』の制作は彼らのクルーZZプロダクションのマネージングもつとめるLOCKSTOCKの事務所と共に新設されたスタジオにて行われた。これはよりプロダクションスキルを上げたKAZZ-Kの音だけではなく、MC2人の気分的にもよりリラックスして自分達の世界に入り込んでの録音/リテイクが出来たであろう また、MPC2000でのサンプリング→PROTOOLS→AZZURROミックスで作られた『白い三日月』に対して、『円鋭』はMPC4000→PROTOOLS→I-DEAミックスで仕上げられている。皆様がこのCDをどのような再生環境で聴かれているかは分かりませんが、是非音のいい密閉式のヘッドホンで『三日月』と『円鋭』を聴き比べて欲しい。KAZZ-Kのトラックはよりワイドレンジに、伸びのある高音域で生楽器のサンプルやハイハットの鳴りを響かせ、豊かなベースラインやズバッと腹に響くキックを聴かせてくれる。なにより驚きなのは「尖」で迎えた今作での最大のトピックである鈴木勲のウッドベースとスガダイローのピアノですら、アルバム全体の中で違和感なくはまらせていることだろう!よくヒップホップのアルバムで生演奏のゲストを迎えた曲はそこだけ音質が浮いてしまっていることが多い。KAZZ-Kはそんな問題を、1度取り込んでフリップし直すことで、あくまでも自分のトラックのパーツの一部として再構成し、自然に仕上げている さらに『白い三日月』にはMPC2000特有のコンプ感みたいなものを、ILL SUONOなどで知られるAZZURROの手によって"らしい"鳴りにおさめられ、時に日本語ラップの黄金期とも言われる90年代半ばのフィーリングを熱いラップとともに響かせ、時にDJ KRUSHを思わせるドープでアブストラクトな音像を作りだし、『白い三日月』のジャケットそのままの冷たさと美しさがそのまま鳴っているようだった 少し話がステルスから脱線するが、所謂"NUJABES以降"とくくられるようなJAZZY HIP HOPが今の日本のアングラシーンには沢山いるように思われる。その音はNUJABESのファーストや初期HYDE OUT作品をお手本になぞったような、割とドラム&ベースが薄く、前ノリ気味に跳ねたビート感、ソウル/ジャズからのフレーズサンプルをパッドに当て込んで音階をつけるといったステレオタイプなものが大半の様に思われる…しかし、これがびっくりするくらい売れているらしいのだ…当のNUJABESはセカンドにおいて、さらなる進化を遂げているというのに、フォロワーはまだファーストの頃のNUJABESの影をまだ追いかけているような… ここで話をステルスに戻しますが、『円鋭』でのDJ KAZZ-Kの音作りはそんな枠には収まっていません!もし『白い三日月』のインスト盤が出たならば、前述のNUJABESフォロワー並みに、そういったソフトテイストの甘口ヒップホップを好むお子様にはフィットしたに違いありません。しかしカズKは違った!DJとしての彼のプレイをご存じの方にはよく分かるでしょうが、DJ KAZZ-KはDJプレミアが三度の飯より好きな骨太のB-BOYなんです!『円鋭』でも最初を飾る"TRIangle"の短いイントロが終わり、聴こえて来るのはGANGSTARR感バリバリ、もっと言えば"FULLCLIP"感全開のドープ・ビーツとフリップされたフレーズなんです そろそろ(2)について触れていきますと、前作『白い三日月』はある種さんピン以降の日本語ラップのスタンダードとも言える、2MC+1DJでのアルバムでこれ以上は有り得ないクオリティまで到達していました。客演についても、同じ横浜をベースに活動するクルー「レペゼン184045(非通知横浜スタイル)」ZZ PRODUCTIONから、ファーストアルバムが昨年各方面で話題の"サイプレス上野とロベルト吉野"や"ディープサワー"をはじめ、シークレットトラックのZZ全員参加のポッセカットまで、ファミリー感の強い内容となっていました その『三日月』発売前後のステルスは、かなり積極的にホームイベント以外の日本語ラップイベントに参加していました。中でも北海道から関西~九州までのラッパーが集まるような大舞台でも、ステルスを中心とした"ZZプロダクション"として、まるで亜熱帯雨林の頃の雷を思わせるような熱気の塊となってオーディエンスを爆発させていました。その時期のライブを体験したヘッズならよく分かるでしょうが、彼らは自分のバースが終わると、その溢れだすテンションをもてあまし、まるで人間魚雷のように次々とフロアにダイブしまくっていたのです!勿論、生半可なテンションではそんなライブはかませません。ここぞという大舞台ではライブ直前、彼らはお互いを気合い注入すべくビンタし合っていました!見てくれだけでなく、中身まで純度1000%のラップ中毒、それが2005年当時の彼らからの"26歳の回答"だったのです その後、新曲の制作を始めた2006~2007年のステルスは、意識的にホームイベント以外のライブをやや控え目にしているように見えました。その時期のライブでは、日本語ラップ中心のイベントよりもこだま和文など他ジャンルのアーティストとの共演が多く、もともと幅広かった彼ら3人の音楽的な幅を、更に豊かにしたのではないでしょうか そして少しずつライブで披露されるプロトタイプの新曲として、ステルス初の12インチ(超限定プレスの為、今やプレミア化してしまった…かつて彼らが憧れたラッパー達のように!!!)も切られた"風見鶏のうた"や"大時計のダンス"、アルバム発売前に先行12インチが出た"ソラノウタ"などがパフォームされるようになってきた。そこで聴く事が出来た完成途中の新曲群には、早くも『白い三日月』で作り上げた"日本語ラップ・スタンダード"のその先を越えようとするオリジナリティ溢れる"新しいポップス"が確かに感じられたのだ! 最後に(3)についてですが、前述したようにZZプロダクションのファミリーアルバムのようにも感じられた『白い三日月』に比べて、『円鋭』では"ワンムー"でのtoto、"尖"での鈴木勲・スガダイローと極少数の所謂ヒップホップ畑以外からの客演のみとなっています。とはいえ、この人選は2年半のステルスの活動を見ていれば、必然であり、ごくごく自然だと納得出来るでしょう。お互いがお互いの音楽性を深く理解・共感してるがゆえに、出来た2曲はなんらアルバムの中で浮くこともなく、自然に配置され、カズKは"ワンムー"での今までにないゆったりとしたBPMで、後のりの溜めた心地良いビートに美しいtotoのボーカルをのせ、"尖"ではジャズメンらしくアドリブをばんばん当てていくようなウッドベースやピアノを、彼の叩き出すMPCのビート上にまるでライブ・ドラマーのようにはめていくのです!これによって、カズKのトラックメイカーの評価は、NUJABESやMITSU THE BEATS、CALMなどと並ぶようになるのも時間の問題でしょう!

本稿では、筆者が残念ながらラッパーとしての目線でアルバムを聴けていない為、crime6とBELAMA2、この2人のラッパーとしてのレベルアップについて、技術的な指摘を出来ないことを深くお詫びします…とはいえリスナーとしての印象批評をするならば、このアルバムの2人のラップには"優しさと柔らかさ"を強く感じることが出来ました 前作では時にスピーカーの向こうから唾が飛んでくるかのような熱さを、時にアブストラクトなトラックに溶け込むかのようなクールさを感じさせたラップが、より普遍的なテーマにシフトしたリリックと共に、スムーズにトラックにマッチしてひとつの音楽として一体化し、アルバム1枚が45分で1曲の組曲のようにまとまった聴後感を我々に感じさせてくれるのです。誤解なきように言っておきますが、メジャーデビューした途端にいきなりサビで歌い上げてしまうようなセルアウトでは決してありません!むしろ、より純度を増した100%のラップ・アルバムでありながら、良質のポップス(今ホントにこう呼べる作品が年間何枚あることでしょうか…)として成立しているのです。これはカズKのトラックに絶対的な信頼を置いている2人のラッパーだからこそ成し得た奇跡に違いありません! やおらエモーショナルな書き方をしてしまいましたが、この3人からの"29歳の回答"を受け取ったら思わず熱くなってしまいました。そしてこの『円鋭』の曲も、これから数々のライブで披露される度に、よりエモーショナルにディープに進化していくことでしょう!筆者も皆様と一緒にその熱いライブを見せてくれるこれからのステルスを見続けて行きたいです

(文:TEEZEE)

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by zz_steruss | 2011-01-12 16:43


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